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あの頃のこと、胸の中に・・ [サクラ大戦]

私の大好きなフィクションには、ひとつの共通点がある。
それは、実在する土地を舞台にし、この世界の時間軸に即しているということだ。
サクラ大戦もそんな作品の一つである。

私は10代のすべてを東京のど真ん中で過ごした。
私のふるさとの風景は、皇居周辺である。
よって銀座や浅草を主に舞台とするサクラ大戦には、知った地名が多く出てくる。
花組本部の置かれている大帝国劇場の外観こそ横浜開港記念会館がモデルとなっているものの、
銀座を歩けばサクラの風景が鮮やかに脳裏に浮かぶ。
花やしきを眺めれば、紅蘭がいたところだと思ったりするのである。

また、サクラ大戦は太く正しいと書く太正時代が舞台とはいえ、
第一次世界大戦に対応する欧州大戦が起こったり、キャラクターの過去でロシア革命や辛亥革命を描いていたりと、史実にゆるやかに即している。
花組隊員の外国出身者たちは、当時の日本が比較的良好な外交関係を保っていた国々から来たことになっていたりもする。
かつて帝都の地にさくらたちが住んでいた、と考えると胸が熱くなる。

サクラ大戦を通底するのはノスタルジーだと思っている。
シリーズ1のエンディング、「花咲く乙女」は、とある女優が舞台に立っていた自身の若き日を思い浮かべるシーンから始まる。

 あの頃のこと 胸の中に
 思い出がくるくるとまわる




曲調が変わると、そこはもう舞台の上。
きらめく舞台の上で咲き誇る花たちの姿が歌われる。

 熱い想い この身を焦がし
 たとえ あした命尽きても
 歌い踊り 舞台に駆けて
 君に届け 今宵高鳴るその名

 帝国華撃団・・

「あした命尽きても」という言葉は、若かりし頃のほとばしる生命力のことだと考えられるが、
同時にこの女優が今際の際に立っていると示唆していると思わざるをえない。
曲の最後、再びテンポが落ち、冒頭部と同じ曲調で女優は静かに歌う。

 歌い踊り 舞台が跳ねて
 君に届け 今宵高鳴るその名

舞台が跳ねる、それは女優の命が尽きるとき。
命は消えるが、その名は後世に残る。

音で聞いても同じだが、「その名」であるところの「ていこくかげきだん」が歌詞カードでは「歌劇団」ではなく「華撃団」でになっているところがすごくいい。
秘密組織としてあくまでも世を忍ぶ仮の姿で舞台に立った花組の隊員たち。
一般の人には「歌劇団」としか聞こえないが、同じ花組隊員として戦ったプレイヤーには、「華撃団」として聞こえてくるのである。

「花咲く乙女」は、もう手の届かない、でも遠い昔に存在したかもしれない帝国華撃団花組の姿をきらきらと浮かび上がらせる。
歌の構成、歌詞ともに非の打ちどころがない出来であり、サクラ大戦の世界観をきれいにまとめた名曲だ。
サクラで一番好きな曲は何かとよく聞かれ、そのたびに迷っていろいろと挙げてみるけれども、結局いつも一番好きな曲にはこれを挙げることになる。

《追記》
出典が思い出せないので定かではないが、たしか声優さんたちが召集されて最初にしたサクラの仕事が「花咲く乙女」のレコーディングだったとどこかで聞いた。全員で歌うのかと思いきや、ひとりひとりブースで録音で緊張したとか。サクラの役者さんたちは、このあと歌謡ショウなどで歌がどんどんうまくなり、息もぴったりと合うようになっていくのだが、最初期の歌であるこの曲においては、全員で歌うサビのピッチがあまり合っていない。パフォーマンスとしてもっといい曲はほかにたくさんあるが、まだ花組の役者さんの息が合っていない時代の歌ということで、サクラファンとしては聞くたびに感慨深くなる。こんなところにもノスタルジアが・・
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